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チロル

も一度読みたい!昔ばなし:2.1

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Howdy! 夢旅チロルだよ!

 この話は後編、『番町皿屋敷』の考察パートだ! 前編の昔ばなしパートを見ていない人は今すぐ読んできてね! ぜひコメントしてね! 今回もコメントしていってね! ツイートとかで宣伝してもいいからね! みんなのコメントがチロルのエサになるよ! よろしく!! (盛大なダイレクトマーケティング)

  → 昔ばなし2

じゃ、前回冒頭で示した今回のテーマを改めて掲げよう。

『こわい昔ばなし』とはなんなのか――。

     

 『番町皿屋敷』伝説は、日本全国で語り継がれている、発祥不明の昔話。大筋は同じ。奉公人の娘が、10枚の皿が1枚足りないと冤罪を着せられ、死ぬ。娘の霊は皿を数え続け、それが怨念から祟りになる。ついでに、和尚の機転で10枚目の皿を見つけ無事成仏する。

え?ついで? と思ったあなた。この話、和尚いなくても成立するんですよ。その代わり救いがなくなるけどな!!!

 私はこの話の描写と省略にだいぶ悩みました。前回みたいにすぐ終わる話じゃなし。 というわけで、文章のプロと、詠み人におはなしのチェックをしてもらいました。この場でお礼申し上げます。 ちなみに私が名前思い出せない+現代風でヒナちゃんになったぜ!記憶ガバ! ところで私の文章を読むと私っぽいと言われたんだけどそうなの? んーまあいいや。本題、本題。

 この話の大事な点をまずふたつ。 『日本全国にある』『発祥不明』 江戸時代あたりにできたらしいけど、五番町とはどこか、例の娘の墓もあちこちに。どういうことだってばよ!! さらに言えば、ナントカ和尚さんの多くは時代に見合わない有名なお坊さんだったりする。あーもうめちゃくちゃだよ。…これは、この先の話で分かると思う。 江戸時代に同じ話が全国にあるそのすごさ、おかわりいただけるだろうか。紙は量産も保存もむずかしい、一般人の全国行脚は人生の大博打。今はいい時代になりましたな! で、そんな中で同じ昔ばなしが幅広く広がっているんだ。ナンデ?

     

 簡単に言えばすごく共感されたから。

     

ヒナをメイドさんと書いたけど、この「奉公人」という制度は全国にありました。引き取り手がいないとか、育てきれないとかいう子供がいる。彼らを都会のデキる人の、猫の手も借りたいニャンて所に送り出した。写真まであるとか。 めっちゃ近代まで通じたんです。それが寺の小坊主だったり、職人の弟子だったり、店の使い走りになったりする。 当然、上下関係があります。奉公人から見れば、行き倒れかねない命を拾ってくれて、ゴハンも住処も、よくできればお給金ももらえる。そうした理由で雇い主に逆らう理由は特にないです。 雇い主から見れば、手軽に転がり込んでくる働き手です。が、教育や衣食住なども当然必要。使い潰しちゃった☆とはいかないのが日本の主従の価値観(たぶん)。

そして両者から見て大切なこと。 彼らが良く学び成果を出せば、雇う側も信頼して重要な仕事を任せられる。そして最後には褒美として、店を、家を奉公人に分け与える、継がせることまでしたのです。ヒナでいえば「嫁に出してくれる」がそれ。 人材にして家を繋ぐ縁。それらが雇い主と奉公人の関係。

 …ところで話はズレるが 諸君 私はスプラッタものが苦手だ 個人的なイメージだけど洋物ホラーはギャーッワーッグシャーッのお化け屋敷和製ホラーはじめじめぬるぬるがどんどんのしかかる肝試しで作者の意図にかかればどんな人でもやりたい放題ヴォエ!  ……おっと個人的な話が過ぎた。本題、本題。

 なんでこんな話になったかというと、元の旦那は火付盗賊改方…とか、とにかくえらい役人。これがまあ権力者で、刑罰のためには何でもしたんです。ん?今何でもryその通りです見せられないよ。 ヒナは拷問の最中に指を切り落とされてる。それがのちに、奥方に生まれた子供が、同じ指を欠損するんだ。赤ちゃんは全ッッッ然悪くないのに、親が色々したせいで実質みなしごに。不自由するだろう。めっちゃかわいそう。 略してもいいけどこのシーン(悪い意味で)お気に入りだから、だって昔は「ただの人が妖怪になれる」時代だったと思ってます。因果ありそう。 ヒナのように、ひどい扱いを受ける奉公人は一定数いたそうで。

 ここに、この話が生まれた由縁があると私は信じています。

奉公人からすれば。 元家なしでも、努力に見合った褒賞がもらえるかもしれない。それに家で、家族で、職場である奉公先のためにがんばりたい。なのに理不尽にイジめられたり、あまつさえいたぶられるとかヤだ。絶対イヤだ。自分も一人の人間だ。

雇い主は、奉公人の責任を負う。 時には彼らの失敗を己が取り返す事になり、タダ飯喰いを殴りたい時もありましょう。それでも彼らは自分を信じて心身を預けてるし、きちんと面倒を見れば見返りは大きい。それに『奉公人に』『罪を着せて』『殺す』などの三連コンボがバレた日には、周囲からの評判もガッタガタに落ちる。徳川将軍も助走をつけて家をぶっ潰すレベル。

 『奉公人』は『奴隷』じゃない。

……いやその、言っちゃえば当時もっと身分低い人たちはいたけどさ。

簡潔?に言えば、「弱い私たちだけどがんばるから痛くしないでほしいお願い」「誰相手でも悪事には報復があると覚えるための戒め」…これが、『共感された理由』。雇い主も奉公人も日本中にたくさんいたから。

なぜ、倫理や感情を問う寓話の中にこわい昔ばなしがあるのか? これらの話を聞いた(主に)子供たちは、「悪役みたいにはなりたくない」と行動を戒めるでしょう。それが人に好かれ、喜ばれる善い人間像を形作っていく。

   

 こわい話が、人をやさしくするんだ。

   

『共感される』『ためになる』話だからこそ、ゆかりも知れぬこの話が全国の、あらゆる身分の人に語り継がれた。親から子へ、その孫へ。 全国の話を調べると、語り手の出身地や身分によって、微妙に内容が違うんだって。どこともしれぬ、どこにでもあるおはなしだからこそ、地域に根付くように広まったのでしょう。そして少女の霊を悼んだ人たちが、せめてこの地で安らいでくれればと墓を建てたのだと思います。

   

 今、この話が最新作なら『ざまぁ系』とか『半〇〇樹タイプ』とかに分類されるんだろうな。一般人が上位職の悪事に反旗を翻し成敗する…割と王道ジャンル。この話が報われてるかというと絶対そんなことないけど。番町皿屋敷にはスッキリ要素はなくても、恐れられることで愛される魅力があります。

 説教臭くなるけどさ、私は今こそこの話を、改めて全国に広げるべきだと思う。「身分」は表向きなくなったけど、やっぱ上下関係があって、それで辛い思いをしている大人さんはたくさんいるはず。メルヘンを信じるかどうかは上辺だけだ。もっと奥にあるものを見ないと。それに子供向けの話って人間の「考え」の根っこに大きな影響を与える。いくつになっても通じるはずなんだ。

 私はこれからも、発掘を続けていく。そして自分なりにその宝石をカットしてみる。これは、そんなシリーズです。

   

 ところでみなさん、冒頭でも言いましたが和尚の話抜きで読み直してみてください。間違いなくホラーです。実は「こわい話」の趣旨に添うかって点で、ラストをこちらに移すか悩んだのですが、まとまりや色んな意味で『ああ』なりました。 その和尚ですが、とんちのような方法で少女の霊を成仏させています。なぜ最後に毛色が変わったのか――

最初は和尚の話はなかったのでしょう。だけどこれを聞いて恐れた人たちが、きっと、少女に『救われてほしい』と思った…できるだけ幸せで、穏やかな方法で。 人の口に戸は立たぬと言いますが、その扉の形は語り手によって違います。ある意味この時代だからこそ、こんな後日談があったんだよ!と付け足しても、誰も疑わないはず。ましてそれがハピエンなら。

 こわい話に、人がやさしくしたんです。

この話には落語バージョンがあり、『井戸の美女の霊に見惚れた者達が、毎晩彼女を見に行き9枚数える前に逃げ出す』ギャグ話があります。彼女はめっちゃ人気者になり、成仏できずともなんだか幸せそうです。ここまで来ると、恐ろしいだけでなく親しまれる存在になったんだな、としみじみ。これも、『語り方の違い』なのでしょうね。

 童話などが広く、ヂズニーとかで採用されるのも、直接的な別人になるのも、キャラや物語のモチーフになるのも、それぞれにピックアップして伝えたい自分たちの解釈があるからでしょう。そんなオハナシや人物を、ぜひ見比べてみてください。

  

 今回はこの辺で、夢旅チロルでした。幸せが幸せを呼びますように。

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