ベリル・ペティグリューが転んだって!
また報告していらないって? だって今度は畑に突っ込んだしさ。
目もぱっちり開いたし、足腰もしっかり立てるようになったし、歯もひとまず生えそろってみんなと同じごはんを食べる。ヴアリさまの子だけあって、とてもきれいではあるとも。
ベリル・ペティグリューは大きな翼をばたばたさせた。
しかし飛べなかった。
ベリルなら今日も元気だよっていう時はみんな苦笑いさ。ヴアリさまの子だから、いきいきしてるのは当たり前だし、そうなるようぼくらも努めるけれども。ベリルはみんなと同じくらい大きくなったけど、はねが大きいから陽射しを隠してどたどた走ってるよ。ベリルは場所をとるし、大きな音をたてるし、仕事熱心だけど苦手だし、小心者だ。はっきり、じゃまだ、って言ったほうがいいだろうか。大きいはねで空さえ飛べればまだいいのに。
「そこにいてくれるだけでいいって言われるためには、君だけができる役目をこなす必要がある」
夏の旅人がベリル・ペティグリューの前に立ちはだかって、夏の旅人は居場所をその子にやった。誰も来ない丘の上をひらいて、ベリルはそこで走ったり、叫んだり、見つけたりした。みんなそのうち、いろんなものを丘の上に持っていくようになった――つぶしたり、こわしたり、そういう風にしたいものをね。
ベリルが走り回った年は、いつもの年の何倍も働いて、いつものごはんを食べることができた。ヴアリさまはみんなをたいへん気遣って、ここにないものを持ってきてくれた。疲れた顔でさ。
誰かが「もうたくさんだ」と言った。
みんなのおもいがひとつの塊になって、ある者は苦虫を噛み潰し、ある者はほっと息をつき、ある者は口を閉ざし、ある者は大口を開けた。みんな宝物をべたべたと触ったんだ。