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チロル ペティグリュー山のすてきな季節

ペティグリュー山のすてきな季節(2)

「なつ」

ベリル・ペティグリューが転んだって!

また報告していらないって? だって今度は畑に突っ込んだしさ。


目もぱっちり開いたし、足腰もしっかり立てるようになったし、歯もひとまず生えそろってみんなと同じごはんを食べる。ヴアリさまの子だけあって、とてもきれいではあるとも。


ベリル・ペティグリューは大きな翼をばたばたさせた。

しかし飛べなかった。


ベリルなら今日も元気だよっていう時はみんな苦笑いさ。ヴアリさまの子だから、いきいきしてるのは当たり前だし、そうなるようぼくらも努めるけれども。ベリルはみんなと同じくらい大きくなったけど、はねが大きいから陽射しを隠してどたどた走ってるよ。ベリルは場所をとるし、大きな音をたてるし、仕事熱心だけど苦手だし、小心者だ。はっきり、じゃまだ、って言ったほうがいいだろうか。大きいはねで空さえ飛べればまだいいのに。


「そこにいてくれるだけでいいって言われるためには、君だけができる役目をこなす必要がある」


夏の旅人がベリル・ペティグリューの前に立ちはだかって、夏の旅人は居場所をその子にやった。誰も来ない丘の上をひらいて、ベリルはそこで走ったり、叫んだり、見つけたりした。みんなそのうち、いろんなものを丘の上に持っていくようになった――つぶしたり、こわしたり、そういう風にしたいものをね。

ベリルが走り回った年は、いつもの年の何倍も働いて、いつものごはんを食べることができた。ヴアリさまはみんなをたいへん気遣って、ここにないものを持ってきてくれた。疲れた顔でさ。


誰かが「もうたくさんだ」と言った。

みんなのおもいがひとつの塊になって、ある者は苦虫を噛み潰し、ある者はほっと息をつき、ある者は口を閉ざし、ある者は大口を開けた。みんな宝物をべたべたと触ったんだ。


つづく

次回投稿  7月6日 12時予定

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夢旅団チロル

はじめまして!文芸創作チーム夢旅団の団長チロルです。 うそです。通称チロルと申します。 想像の翼を広げてつかまえた光景を文字にするのがしゅみです。 「文字は遊び相手で、同志であり、親しき仲にも礼儀を尽くすこと」を モットーに今日も書いています。 最近は紙と鉛筆とサイコロを使ったオハナシで遊ぶのもしゅみです。 我々夢旅団のメンバーが書いた名義で本を出したり 中編やオマージュ作文などにもチャレンジしています。 夢旅団SSと称して短いお話を書く修行もやってます。 ファンタジーと水色時代を大切に、大人の苦みめざして成長中です よろしければ言葉と遊んでいってくださいな!

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